サブテーマリーダー:奥田洋司
東京大学人工物工学研究センター 教授

科学技術が複雑化するにつれてマルチフィジクス問題のシミュレーションへの要求がますます強まっている。しかしながら、既存の連成解析ソフトウェアは、単一の物理現象の解析ソフトウェアと同程度の成熟度でもって実際の設計、開発の場において受け入れられてはいない。その主な理由は、実践レベルの連成問題におけるソフトウェアの汎用性およびハイエンド計算機環境への適用性の欠落である。
本研究開発では、実機マルチフィジクス問題の解析に必要なソフトウェア(とくに構造解析部分)の機能に留意しつつ、ハイエンド計算機環境におけるマルチフィジクス有限要素法ソフトウェアの新規開発、および、既存ソフトウェアのハイエンド計算機環境への適用、を効率的に支援するライブラリ群(HEC-MW)を開発・公開し、我が国の基盤産業界の競争力強化、科学技術シミュレーションソフトウェア開発の人材育成に資することを目的とする。
上記目的を達成するために、以下に示す(1)~(3)の項目(サブテーマ)を実施する。
- (1)
- 革新的汎用連成解析のための構造解析ソフトウェア FRONT-STR の開発・公開
- (2)
- 弱連成インターフェース構築による実践的連成問題解析
- (3)
- マルチプラットフォーム(*)対応化ライブラリ HEC-MW の整備・公開
(*) OS: Linux/Windows、 プロセッサタイプ:スカラ/ベクトル
これらは、以下のような革新性を有している:
- ・
- 地球シミュレータをはじめとするNLS(ナショナル・リーダーシップ・スパコン)における
構造解析ソフトウェア - ・
- グリッド環境(Cluster of PC-cluster)で運用できる構造解析ソフトウェアおよび
有限要素解析アプリケーション開発環境 - ・
- さまざまな環境(OS、プロセッサタイプ)における効率的な大規模並列構造解析図1にHEC-MW
およびその上で開発されたアプリケーションFRONT-STRのイメージを示す。

図1 HEC-MWの利用イメージとFRONT-STR
HEC-MWの主なサポート機能:
データ入出力、線形ソルバ(直接法、反復法)、有限要素処理(マトリクス計算、コネクティビティ生成等)、並列可視化、連成カップリング、MPIラッパー、領域分割。
FRONT-STR の主なサポート機能:
静的弾性解析、動的弾性解析、固有値解析、静的弾塑性、熱伝導解析、アセンブリ構造解析。