器官・組織・細胞マルチスケール・マルチフィジックスシミュレーションの開発

循環器系のマルチスケール・マルチフィジックス統合シミュレーションシステム

サブテーマリーダー:大島まり
東京大学生産技術研究所 教授

サブテーマリーダ: 大島まり

器官・組織・細胞レベルでの異なるスケールの現象を力学・生化学・生理学的な観点から有機的に結合して解析する、統合的な循環器系シミュレーションシステムを研究・開発する。将来的には血管病変の発症・進行のメカニズムを解明し予防・治療法の開発に役立てる。

(1) 3次元血管モデリングツール

CTやMRIなどの医用画像を基に血管の3次元構造を解析し、血管表面形状を作成するプログラムを開発している。動脈瘤など病変部位を有する血管にも適応可能にする。

(2) 3次元流体解析コードによる血流解析モジュール

流体解析コード「FrontFlow」を使用して、3次元血流解析を行う。1次元解析モジュールとリンクさせ、末梢血管による流量・圧力のコントロールを反映させる。

(3) 3次元血流・血管壁連成解析モジュール

血管壁を超弾性体として扱うことができる流体構造連成解析コードの開発を行う。細胞・組織の動態変化解析や物質輸送モデルの導入により血流-血管壁-物質輸送の連成シミュレーションを実現する。特に脳内酸素輸送の三次元的な分布を求め、物質輸送論に基づく脳内酸素輸送を研究する。

(4) 粒子法による微小循環系の解析モジュール

血管や血球を含めすべての要素を粒子としてモデリングする粒子法に基づくシミュレーションシステムを開発し、流体コードでは扱えない微小循環系の解析を実現する。微小循環内を流れる血液の非ニュートン性や血栓の形成・破壊などの発症過程の研究を行う。

(5) 細胞・組織の動態変化解析モジュール

力学・生理学的なメカニズムに基づく血管壁の構造変化をモデル化し、マクロな流体-構造連成シミュレーションへと組み入れる手法の開発を行う。

(6) 1次元血流解析モジュール

微小循環系での非ニュートン性、圧力・流量分布や酸素輸送・交換はマクロ循環系の血行動態に影響を与える。循環系の血管ネットワークをモデル化し、1次元解析によりマクロスケールシミュレーションにこれらの影響を加味する手法を開発する。

(7) 統合されたユーザーインターフェース

本システムは複数のプログラムモジュールより構成されている。各モジュールには統合的なユーザーインターフェースを装備し、統一的な作業環境のもとで一連のマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーションを実行することができるシステムを開発する。

図1

図1 器官・組織・細胞のマルチスケール・マルチフィジックス・シミュレーションシステム概要

図2

図2 血流・血管壁連成解析コードによるシミュレーション結果:中大脳動脈分岐部における流速分布(弾性壁近似、高血圧条件)


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