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次世代流体解析[研究トピックス]Nano-scale Device Simulation[Resaerch Topics]





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乱流LESモデリングと計算技術

本プロジェクトで開発すべきソフトウェアの基本モデルとしては、これまでのLES実用化研究の成果から以下のように考えている。流れ場のタイプとしては、乱流の影響が顕著に現れる領域である、高レイノルズ数、低マッハ数(非圧縮性流れ)を主たる対象とする。




乱流モデル

基本モデルとしてラージ・エディ・シミュレーション(LES:Large Eddy Simulation)を採用する。LESでは乱流の大きなスケールの渦変動は直接解析し、格子で解像できない小スケール変動のみをサブグリッド(SGS)応力としてモデル化する。
 ここで、近年Germanoらの提案したダイナミックSGSモデルはLESにおける乱流モデルパラメータを計算解の情報からダイナミックに最適化する考えに基づくもので、格子解像度に応じてDNSへ適切に漸近すること、各種乱流モデルに展開できることなど汎用モデルとしての利点を持つ。差分法(FDM)や有限要素法(FEM)を用いた実用的計算法が提案され、剥離など複雑な工学問題への適用性が示されている。

燃焼流モデル

燃焼流など主な対象とした複雑乱流場へのラージ・エディ・シミュレーション法の構築に関する基礎的研究の成果として、予混合火炎および拡散火炎に対する基本的な乱流LESモデルの提案と、数値検証が示されている。[2]
  マルチスケールを分離して乱流LESを適用するとき、化学反応効果は直接解像されないサブグリッドスケールを通して流れ場に反映される。このとき、火炎のミクロスケール構造をflamelet概念で近似し、マクロスケールへの効果を保存的なスカラー量の輸送モデルで表すのが効果的と考える。
  この解析モデルは予混合火炎や単純拡散火炎では個々に有効性が確認されているが、一般的な非予混合火炎の特徴を表現するには混合率と反応進行度の少なくとも2つの指標を同時に必要とする。その基本的な解析モデルの一つとして、理論燃空費を基準とし物性値をPDFモデルで評価する保存スカラー方程式と、反応進行をflamelet火炎面の伝播で似するG-方程式の連成解析モデルを採用する。
  これらの乱流火炎LESは、バックステップにより保持される予混合火炎や円筒バーナ拡散火炎などの基礎的な問題では温度や流速の平均分布、乱れ分布の予測や、化学素反応に基づくデータベースを適用して得られるNOxなどの反応生成物の分布予測において有効性が検証された。
  また、中規模な実用LESの事例としては、吹き上がりバーナ火炎や、ガスタービン燃焼器の不均一燃空費分布をもつ予混合燃焼に適用され良好な結果を得ている。
  しかし、サブグリッドスケールのflamelet構造の間欠的分布や、ミクロスケールの火炎内部構造に対するグリッドスケールの影響については未解決な点が多いため、基礎的DNS研究の成果や時間平均モデルにおける理論検討などを参考にいくつかの可能性を試行して解析法の改良を行う。




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図2 LES applications to combustion flows
(left: lift-up burner flame, right: premixed d flame in a gas-turbine combustor)





粒子混相流モデル

分散系混相流動に適用しうる普遍的な知見として、特に、気泡流、および、固気混相流に関して以下の知見を得ている。[3]
1)気泡運動の詳細モデリングとLES空間平均における分散相への寄与を考慮した気泡乱流LESモデルにより、気泡径の違いが乱流渦気泡輸送や浮力効果にあたえる影響が解析される。
2)固気相間の相互干渉を考慮した乱流LESモデリングによりサブグリッドスケールにおける散逸は適切にモデル化されている一方、グリッドスケール散逸機構については従来の粒子モデルでは必ずしも再現されない。

これらの結果から分散粒子混相乱流のLESモデリングの有効性が確認されるとともに、乱流現象と粒子分布生成の時間スケール、空間スケールの比が粒子-流体カップリングモデルとその解析法の最適化において考慮されるべきことが示された。
  そこで、雷ら[14]は粒子-流体カップリングにおいて異なるスケールや粒子間干渉などをも考慮した総合的な固気混相流解析モデルとしてFull Way Coupling法を提案するに至り、ダイナミックSGSに基づく定式化を示した。さらに、同様の運動力学に従うと考えられる液滴混相流(スプレー流れ)に対して蒸発と燃焼のモデル化を取り入れた液滴燃焼流予測モデルへの展開を図る。




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図3 LES of Particle-laden turbulent channel flow




流体音モデル

空力騒音は流れの変動(渦の変形)から発生する、密度・圧力などの微弱な変動であり、原理的には流体の基礎方程式であるナビエ・ストークス方程式を直接数値積分することにより予測することが可能である。このような方法は空力騒音の直接計算と呼ばれている。しかしながら、ファンや自動車車両などから発生する空力騒音の場合、音として伝播する変動は,音源となる流れの変動に較べて遥かに小さく、かつ、流れの変動の空間スケールと伝播する音波の空間スケールも桁違いに異なるため、空力騒音の直接計算を工学問題に適用することは実用上不可能である。
  そこで、音源となる流れの変動と音の伝播とを分離して計算する手法を用いる必要がある。加藤ら[4]は、LESによる空力騒音解析手法の開発を行い、LESにより計算された物体表面圧力変動、および、音の伝播を表す波動方程式の解(Curleの式)を用いて、遠距離場における空力騒音を予測する手法を提案した。特に、円柱等の二次元形状物体周りの流れから発生する空力騒音の予測に対しては、物体表面圧力変動の相関を考慮することが重要であること、ならびに、この相関を考慮した流体音の予測手法を提案し、円柱等の流れから発生する騒音スペクトルの定量的予測が可能であることを世界に先駆けて示した。
  さらに、分散主記憶型の超並列計算機による大規模なLES解析を実現すべく、領域分割法に基づく、計算効率の高い並列流れ解析手法を開発した。この開発により、500万要素から1,000万要素に及ぶ大規模LES計算を実用的な計算時間内で実現すると同時に、空力騒音の発生に大きく寄与する物体近傍の渦運動を選択的に解像すること可能となった。これらの先行する開発研究により、新幹線車両に用いられるパンタグラフ碍子などの実機周りの流れに関する空力音源や発生する騒音スペクトルの予測へ応用に成果をあげるなど、主要な基礎技術は構築されている。
  さらに、境界層から発生する騒音など、より空間スケールの小さい乱れから発生する空力騒音の予測を可能にすべく研究を進めて、高精度な乱流音予測法を完成させる。




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図4 LES application for separated flow nose analysis



参考文献
[2] 小林敏雄、科学研究費補助金(11305017)「LESによる乱流燃焼火炎解析法の開発とその評価」報告書(2002)
[3] 小林敏雄、科学研究費補助金(08405017)「LESモデルによる混相流数値解析法の開発と評価」報告書(1998)
[4] 加藤ら、(1994)機械学会論文集B60-569,pp.126-132







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