サブテーマ(4)では,有害危険物質が拡散している状況下で避難誘導によってどのように被害が軽減できるかを検証するために,屋内外拡散予測システムと連携する避難シミュレーションを開発しています。いろいろな状況下での避難誘導計画の効果に関する理解を試行錯誤的に深め,定常的に起きる問題や被害が拡大してしまう条件を知るために,短時間で多数のケースを検証する機能が必要になります。そこで,ネットワーク人流モデルを採用して高速計算可能な避難シミュレータを実装しました(図1)。避難シミュレータに対象地域や施設の避難経路,避難対象者の初期位置,避難先,経由地が入力すると,避難シミュレータは周囲の状況から定まる各避難対象者の歩行速度を計算し,初期位置から避難先までの避難過程を計算し,避難完了時間を算出します。さらに避難シミュレータが屋内外拡散予測システムと連携している場合には,各避難対象者の有害危険物質の暴露量を計算することができ,暴露量に応じた被害状況を算出することも可能です。
また,実際の避難誘導の効果を検証するために,大規模複合商業施設内の劇場から,約600人の訓練参加者が実際に避難をおこなった訓練をステレオビジョンやアクティブRFIDシステムで計測し,分析をおこないました(図2)。また,実際に取得したデータを利用した避難シミュレーションの精度の向上にも取り組んでいます。
図1 ネットワーク人流モデルを用いた避難シミュレータ
図2 劇場からの避難の様子