三菱重工業では,市街地において化学剤(C剤)あるいは生物剤(B剤)が散布された場合の被害予測が可能な「屋外拡散予測システム」を開発しました(図1)。このシステムでは,気象条件とNBC剤の散布条件を入力すれば,時々刻々の拡散状況を計算し,わずか数分で被害者数の予測が可能です。計算の高速化の為に,気流解析は気象モデルを使用して事前に行われ,16方位の風向分の気流データベースとしてシステムに内蔵されています。気流解析および拡散解析では,市街地のビル群の影響が考慮されている為,ビル背後の逆流域における拡散現象やストリート・キャニオンでの滞留現象等も再現可能です。
システムの予測精度は,米国の市街地での野外拡散実験データや東京大学の風洞実験データを使って検証され,濃度予測について妥当な結果であることが示されています。また,某自治体のテロ時における被害対処訓練において,システムの有効性を実証済みです。
図1 屋外拡散予測システムの概念図