大規模構造物疲労解析


特 徴

「ひび割れ」,「金属疲労」,「疲労破壊」と言う言葉は,テレビや新聞でよく見かけることと思う。これは,金属構造物に微細な割れ(き裂)が発生し,繰り返しかかる荷重によって,少しずつ成長して行く現象であり,き裂が大きく成長すれば,構造物自体の破壊につながる可能性もある。このような破壊が,例えば,原子力機器や航空機などの重要な構造物で起これば,安全上重大な結果を招くため,多くの研究がなされている。

これらの研究では,き裂と構造物全体を同時に扱うことができないため,単純な荷重条件の下で,き裂の挙動を調べることが多い。しかし,このような研究では,実際の構造物にどのようなき裂が発生し,成長して行くかを正確に予測することは困難である。この予測に必要な情報として,実荷重に対する実構造物各部の力学的状態(応力,ひずみ等),疲労き裂先端における金属組織,さらに言えば,き裂先端での金属原子の挙動,といったマクロからミクロまでの現象がある。これらの現象は,別々に検討されているのが現状である。個々の問題の境界条件の設定には,専門的な判断が必要であり,大きな誤差が紛れ込む余地が常にある。これらの挙動を一つのシステムでシームレスに扱うことは,解析の信頼性に対して重要な貢献をするものである。

本解析プログラムは,このような要請の下,金属原子の挙動から,大規模構造物全体の挙動にいたるまでのまるごと構造解析が可能なシステムであり,本プロジェクトでの目標として,実構造物内の疲労き裂進展を解析するものとする。

要素技術としては,大規模構造物解析には,有限要素法(FEM)を,き裂進展解析にはフリーメッシュ法(FMM)を,金属原子の挙動には分子動力学(MD)を用い,これらの連携には,重合メッシュ法および均質化法を応用する。単純な組み合わせだけでは,非現実的な解析コストとなるため,解析コスト削減の工夫が必要である。



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応用分野

FEM(有限要素法)+FMM(フリーメッシュ法)+MD(分子動力学)のマルチメソッド、マルチスケールコードでは従来の構造(疲労き裂進展)解析にミリスケールの介在物からナノスケールの不純物の影響および原子レベルでの破壊現象を取り入れた、従来のシミュレーションよりもさらに現実的で詳細な大規模構造物の丸ごと疲労き裂進展解析を行うことが可能となる。主な応用分野としては、疲労破壊の基礎的な研究のための破壊試験のシミュレーションから、疲労破壊が重大な事故を導く工学的、実用的に重要な原子力発電機器や航空機、車両の疲労き裂進展などが挙げられる。




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